君の名は?
「キャアアアああヒナさまああああ!!!」
「……。」
女子高生たちのけたたましい叫び声が響く中。
本日ここ・明嬢高校に、十二支高校の野球部員数名が訪れていた。
目的は公式2回戦の相手の偵察である。
のだが。
「キャ〜〜〜〜〜〜野球部の方たちが出てくるわよ〜〜!!」
明嬢高校はアイドル養成高校であり。
また野球部9名が明日。公式戦の真っ只中で全国デビューを果たすという事もあり。
他校の女子高生たちのおっかけで溢れかえっていた。
そんな中。
天国は少し落ち着かない様子だった。
「お?どうしTa猿野?」
「い…いや、何でもないっす。」
天国はどうもきょろきょろと人目を避けている様子である。
と、いうか明美になって目をくらませているようだった。
最も女子高生たちの視線は雛壇ほか9名の野球部員たちに注がれており。
十二支高校の面々は気づかれることすらなかったが。
理由を知っていた沢松は、一人笑いをこらえていた。
そんな時。
「…おっ?
見〜つけた。」
ピッチャー、雛壇祀が十二支高マネージャー、鳥居凪に目をつけたのだ。
「君 どこの高校かな?
今日はボクら紫SHIKIBUを見に来てくれたんだね?」
その様子に流石に天国も苛立った。
凪は天国にとって大切な存在であったから。
それまでこのアイドルたちの前にしゃしゃり出るつもりはなかったのだが。
天国は、虎鉄とともに雛壇との勝負にかかることにした。
「さあここは明嬢学園の特設ドーム
これより明日いよいよ全国メジャーデビューを果たす
超アイドルユニット紫SHIKIBUのボーカル雛壇くんと
十二支高校A君が対決するのです!」
そして虎鉄は合ったーボックスに立とうとした…が。
雛壇はその間も凪に近づいていたのだった。
「君がさあ あの虎鉄んとこの女としってますます興味がわいたよ。
どう?今ならこの超アイドルグループの栄えある第一号会員になれるんだよ?」
雛壇の言い草に天国は完全にぶち切れた。
雛壇は凪をただのライバルを見下すための可愛い人形扱いにでもしているようだった。
このミーハーな女性たちの前に出るのは気が進まなかったが。
そんなことを言っている場合ではない。
天国は、静かに凪の手から雛壇の手を振り払う。
「彼女に手を出すんじゃねえ。
邪魔だ。」
「ん〜〜?
なんだい?君は。」
「彼女をてめーのファンと一緒にするな。
そんなに話題が欲しけりゃその辺に居る女にしろ。」
天国は厳しい視線で雛壇を睨み付ける。
「…な、何あいつ!!
ヒナ様に向かって!!」
「ヒナ様はあんたなんかが傍によれる男じゃないわよ!!」
「引っ込みなさいよ、この尻見せ猿!!」
「ヒナ様に勝てるわけないんだから〜〜〜!!」
周りのファンたちが騒ぎ出す。
その時。
「あら?アレって…。
ねえ、あの人って…もしかして。」
「いたわ!!ここよ!!」
その時、突然別の女性たちが入ってくる。
驚いたのは、天国。
「げ!!」
「見つけたわ〜〜HEAVEN!!」
先頭の女性は20代半ばぐらいか。
シックなスーツを着こなした美しい女性だった。
「HEAVENですって?!」
周りの女子高生たちが騒ぎ出す。
「HEAVENって、あの謎の高校生スーパーモデルの?!」
「うそ、あいつが?!」
「…ヤバイ…。」
「HEAVEN〜〜 v
会いたかった!!」
「今日こそあなたの秘密をあばいてやるんだから!!」
「もう、制服姿も素敵!!」
「お願い!この間みたいに「君のものだ」って言って!!」
「すぐそっちに行くわ〜〜!!」
「沢松、てめえか!」
「いや〜〜俺じゃねーよ。
でもこーゆー芸能関係のとこ来たらどっかから情報がもれるの当然じゃねえか?」
「…くそ〜〜。
俺の静かなフツーの男子高校生活が…。」
「あきらめろ〜。
っつーかここまでバレなかっただけ拍手もんだ。
それより、逃げた方がいいんじゃねえか?」
「あ。」
見ると天国のファンに交じって雛壇のファンも天国に向かって突進しようとしてきている。
「あと、頼むぞ沢松!!」
「あ〜程ほどに頑張るぜ。」
そう言うと天国は全力で逃げ出した。
「きゃあああHEAVEN、待って〜〜〜!!」
「あ、あの…君たち!!」
雛壇ほか紫SIKIBUはほとんど無視された。
無理もなかった。
いくら話題があるとはいってもデビュー前のアイドルではなく。
既に有名で、超一流のスーパーモデルに向かうのは。
ミーハーとしては当然であった。
「うそだRo・・・?」
「HEAVEN…ですか。猿野くんが…。
これは…大変なことになりそうですね。これから。」
「猿野さん…。」
(((こんなにライバルが増えるなんて!!)))
「アレが…HEAVEN。
ボクも憧れてたんだ…。」
ふと見ると、雛壇もファンに去られたことより天国のほうに気を取られていた。
「虎鉄!彼は学校ではどんな風なんだ!?
ユニフォームもさぞ似合うんだろうね!
ああ、明日が待ち遠しいよ!」
「な、何言ってやがRu!
モンキーベイベーは俺のなんだYo!」
こちらでもまたケンカが勃発。
公式2回戦はどうやら紫SHIKIBUではなくHEAVENこと「猿野天国」のステージになりそうである。
END
hatanaka様より代理リクエストをいただきました。
明嬢高校を圧倒する女性ファン話でした。
ここで謝罪させていただきます。
試合当日にではなく明嬢高校に押しかけ、なおかつ天国が実はモデルという勝手設定にしてしまいました。
天国自身が呼び出すっていうのはどうも書きづらくて…。
しかも打席にて天国が負けてしまったので、結局勝負する前にファンを押しかけさせることになりました。
だいぶ話が変わってしまい本当に申し訳ありませんでした!
こんなヤツですがどうぞこれからもよろしくお願いします!
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